ナースのためのぷち通訳の全貌が明らかに!!


和歌山大学と開発を進めている、androidのアプリケーション、「ナースのためのぷち通訳」の開発もいよいよ佳境に入っています。

この、「ナースのためのぷち通訳」は、入院場面での看護師と患者の会話を多言語でサポートするというシステムです。

 

入院中の患者さんへの多言語の支援は、回診や治療・処置を行う時だけでなく、病棟での生活を含めた24時間の対応が必要となりますが、通訳者が24時間付き添うことができません。そのため、システムで支援できないかと、現在開発を進めています。

 

どんなシステム?

・看護師の看護場面にあわせて場面検索

「点滴」「クリティカルパス」「アナムネ」など、場面の会話を探して選択すると

→それぞれの場面で使用する会話が表示

→必要な用例を選択

→多言語で発話します。

・音声でかんたん検索

 「食べ物のアレルギーはありますか?」「右を向いて下さい」など、患者さんに伝えたいことを日本語でマイクに向かって話すと、その用語の入った会話が検索できます。

 

・曜日・数字は自由に入れ替え可!

「朝夕1日2回1錠飲んで下さい」、「次の受診は10月12日水曜日です」など、病院の会話には数字、曜日などが多く出てきます。

「ナースのためのぷち通訳」では、用例を選択した後、数字や曜日を自由に入れ替え、それを多言語で発話させることができます。

 

ナースのためのぷち通訳で表示される用例は機械翻訳ではありません!!看護師の監修のもと作成し、センターが翻訳を行っています。(登録されていない用例については、機械翻訳も利用することが可能です。その場合、機械翻訳である旨が表示されます)

 

現在は、用例・翻訳のチェック、システムのチェックを行っており、10月末~11月ごろ完成を予定しています。その後は、実際に病院で利用していただき、今年度中に評価と改善ができたら、と思っています。 


ぷちナース動画
ぷちナース動画

開発に関わって

普段の会話で何気なく使っている表現を明確にする必要性を感じました 用例担当:高嶋(看護師)

 看護場面別に複数名の看護師から集められた用例文を振り分けの確認と看護場面別で使用頻度の高い用例文を追加・作成をしました。

用例の中には「誰が誰に対して行う行為なのか」、はっきり明示していないなどあいまいな表現が多くありました。
普段の会話で何気なく使っている表現でも、多言語に翻訳するためには状況を明確に表現することの必要性を実感しました。
用例を明確な表現にするために、その用例がどのような状況で使用されることが多いのかを考えていくことが難しかったです。

 

また、日本の患者さまに対して、文化・宗教についてお聞きする項目は、あまりありませんが、外国人患者さまに対して、確認する必要があると思われる項目については、用例に入れました。
「右を向いてください」、「仰向けに寝てください」など、動作・体位指示に関わる用例は、検査場面や入浴介助の場面など、いろいろな場面で使用されます。 そのため、場面から用例を検索する場合は、同じ用例を複数の場面から検索できるようにし、少ない作業で素早く見つけられるように項目立てをしました。


この、「ナースのためのぷち通訳」は、外国人患者さまが入院してきた時や、入院生活の中で、患者さまの母語で正確に内容を伝えたい時、夜間の時間帯や通訳できる人がいない時などに活用できると思います。
例えば、入院のアナムネ聴取時や外泊・外出説明などの場面でに役に立てばと思っています。

 

このシステムの構築には、たくさんの看護師さんにご協力していただきました。本当にありがとうございますっ。


用例はまるで、、切り身の魚のよう          翻訳担当:前田

看護師さんが日々の業務を行う流れの中で話している言葉は1匹の魚のようです。

病院という海の中をするするとおよいで、人から人へと伝えていきます。

 

それらの言葉をシステムに登録するために、1文1文区切ってエクセルの表にすると、その魚は切り身の魚のようです。鱗も顔も付いていないため、どんなところで(場面)、何をしているのか(状況)、全く分からなくなってしまいます。

 

例えば 「力を入れて下さい」

 

リハビリなどの場面で、気を緩めないで力を入れて(頑張れ)、と言っているのか、

ベットから立ち上がる時に、倒れないように足に力を入れてと言っているのか、
検査などの場面で、お腹(腹筋)に力を入れて、と言っているのか、

場面や状況によってすべて翻訳は変わってきてしまいます。

 

そのため、具体的な表現に直したり、目的語をつけたり、 という作業をしています。

しかし、それ以上に大変なことは、分かりやすい表現にするだけでは、「いつもの流れ」の中で「いつも言うあのフレーズ」を探す看護師には見つけられなくなってしまう、と言う可能性があることです。

 

そのため、日本語はなるべく看護師が利用する、(一般の人には少し分かりにくいかもしれないという)表現をあえて残し、翻訳では(日本語文の直訳ではなく、)患者さんが見て、聞いて分かりやすい表現を心がけて、作成しました。