台湾の医療通訳

10月中旬、冬が近づき寒くなりつつある中、南国の台湾を訪問し、台湾の医療通訳についての調査を行ってきました。

目次

台湾における外国人

 台湾の在住外国人(大陸出身者を含まない)は65万人で、居留ビザを有している者は55万9千人、その他のビザ資格者は2万3千人であり近年、増加傾向にあり、その主な要因は外国籍労働者の増加である。

 国籍別に人口を見ると、最も多い国籍はインドネシア人の21万7588人(33.48%)である。続いてベトナム国籍14万6544人(22,55%)、フィリピン国籍9万2444人(14.22%)、タイ国籍7万411人(10.83%)、アメリカ国籍3万708人、日本国籍2万5554人となっている。

 

 その内、労働者として台湾に暮らす在住外国人は46万3千人と、在住外国人の総人口の71.2%を占めている。(主な在住地域は桃園県、新北市、台中市)次に多いのは外国籍配偶者(台湾国籍を取得していない者)で4万2千人、6.4%である(主な居住地は桃園県、台北市)。これらが全体の7/8を占めており、おもに東南アジア国籍で占められている。

 

 外国籍労働者ではインドネシア国籍が44%を占めており最も多い、次にベトナム国籍が23,7%, フィリピン国籍が18.8%となっており、これらの国籍者は近年大幅に増加している。外国籍配偶者の国籍はベトナム国籍者が41.9%と最も多く、タイ国籍者13.9%となっている。外国人労働者は増加傾向にあるが、外国籍配偶者は帰化していることもあり減少傾向にある。

 

 また外国人の一時滞在者は主にビジネスや観光を目的にした人が多く、国籍別ではアメリカ国籍26%、日本国籍15.2%となっている。
※台湾では、滞在、一時滞在は「出入国及び移民法」において規定されており、一時滞在は6ヶ月未満、6ヶ月以上を滞在者としている。

 

参考:102年発行政府統計(2013年)

 

台湾における「移民」政策
 台湾は1980年代末から移民送り出し国から移民受け入れ国へと移行している。1990年代になると新移民が増加し、2000年代に移民政策が策定されはじめた。特に1990年代には婚姻移民が増加した。

 2000年の大陸籍との婚姻は4万2966組、外国籍との婚姻は2万1388組で あった。これは台湾の婚姻の1/4にものぼる。こうした状況から政府は婚姻移民の台湾社会への統合に関して力を入れている。

 

 しかし政策として外国籍配偶者と大陸籍配偶者との対応には大きな差があり、大陸籍配偶者の身分の厳格な管理などにより人権侵害という批判も受けている。


台湾と日本の医療システム

 台湾では1995年に医療制度改革が行われ、日本と同様に国民皆保険制度「全民健康保険」が導入されている。

 

医療における情報化

 国民皆険制度の移行に際して、台湾では医療情報の電子化、オンライン化に取り組んでいる。

 

・共通レセプトの導入

 台湾では医療における情報化が進んでおり、レセプトのオンライン化が行なわれている。2000年にはオンライン請求率は100%に達しており、支払いにかかる期間や保険料の概算払いになどにインセンティブがあり、政府による支援もありオンライン化が急速に進展した。


・スマートカード

2004 年から全面的にスマートカードに移行し、すべての国民に対してスマートカードが普及している。(発行数は2300万)スマートカードは健康保険証として本人確認に使われるだけでなく、ICチップに診療情報が入れられている。スマートカードの情報とレセプト請求は同じ仕組みで国のデータセンターに蓄積されるようになっている。スマートカードの導入により、保険加入率が上がった一方、カードには診療情報がすべて入っていることもあり、紛失などによる個人情報流出なども問題点も挙げられている。


日本の病院との違い

 国が変われば医療もいろいろ。台湾の医療機関を訪問する中で、台湾と日本の医療機関の違いをいくつも見つけた。ここではそれらのいくつかを簡単であるが紹介する。

病院での宗教対応

 台湾では宗教の自由が認められており、各宗教は平等であると規定されている。台湾の主な宗教は道教・キリスト教・仏教である。日本では宗教者が宗教者として病院に入ることは稀であるが、台湾の病院ではキリスト教と仏教の信者のため、祭壇を設置した小さな部屋がそれぞれ用意されていたり、患者が個人的に宗教者を呼ぶこともあり、病院に宗教者がくることに違和感はないという。

 また病院としてミサを行ったり、お経を朗読する機会を設けているところも多い。日本では縁起が悪いということで避けられる傾向があるが、台湾では宗教者は葬儀や死のイメージだけではなく、身近な相談者であり、信仰が生活に根付いていることからも、患者からも頼られる存在である事が分かる。

 

インターンが担当する科目? 門診教学モデルの導入

 台湾では、医学生・医学実習生が臨床経験を積み、医療人材を育成し、医療機関の教育の質や病院全体のチーム医療の質を高める事を目的として、インターン生が担当する門診教学の設置を各医療機関に推奨している。今回訪問した大里仁愛病院でも「教学問診」が設置されており、家庭医学、内科、歯科、小児の対応を行っていた。この科目は学びが目的であるため、先生は丁寧に説明してくれると患者からも好評を得ているようである。

 

看護の違い

 日本では「完全看護」だが、台湾では入院 ・入院時には介護人を雇うことが多く、患者の身の回りの世話は家族や介護人が行っている。そのため介護人の食事サービスや介護人・家族用のベットも準備されている。台湾の看護師は医療行為のみを行う。