学会発表してきました


7月7日に開催された第27回びわ湖国際医療フォーラムでセンターから2つの演題を発表しました。

また重野と高嶋が当番世話人として会の企画、進行を担当させていただきました。

効果的な医療通訳者育成プログラムの開発とその評価

重野亜久里、前田華奈、中西香菜、高嶋愛里


 岐阜県の緊急雇用対策としてポルトガル語1名、タガログ語1名、中国語3名の通訳者を採用し、医療通訳を育成する事業を担当した。実施期間は平成24年11月5日〜平成25年2月28日で「医療通訳共通基準」をもとに設計した通訳研修(OFF-JT)と岐阜県下5つの病院で病院実習(OJT)行う医療通訳人材通訳育成プログラムを実施した。通訳研修で学んだことを現場で実践するOJT(3ヶ月間)を実施し、実習途中では個々の課題やスキルアップを行う中間研修(6時間)学習会(週次報告会)なども行った。また研修の実施にあたっては、コーディネイターを導入し、通訳者と共に病院現場に入り通訳者の業務確認や指導を行うとともに、病院の状況や個々の通訳者の状況を把握しながら実状の課題にあった研修提案などを行った。病院実習での通訳利用件数(3ヶ月)は86件で、58人(ポルトガル語19件 タガログ語38件 中国語29件)の患者が利用した。

 

 通訳研修(OFF-JT)の通訳者による4段階評価では平均4.0と全ての講義に関して十分との回答が得られた。また病院実習に対する医療者の評価アンケートでは、病院実習に関しては回答者全員が大変満足、やや満足と回答しており、今後の通訳利用についても90%が「利用したい」と高い評価を得た。効果的な医療通訳者の育成には研修(OFF-JT)で医療通訳者としての知識、技術、姿勢を身につけ、病院での実務を通じて実践的に習得する研修(OJT)の両方が必要である。OJTはOFF-JTでの学びの実践、経験値を積む場である。同時に実務を通じて医療通訳者として職業観(倫理観や業務観)を身につけることも重要な研修である。
 プログラムの実施にあたっては、コーディネイターを設置し通訳者の指導・フォロー、病院との連絡調整を行った。通訳者毎の達成度を確認し、中間研修などで課題を設定するなどし、細やかな指導を行った。病院担当者からもコーディネイターに対して「大変満足」83%「やや満足」17%の回答を得ており、本プログラム実施においてコーディネイターは重要な役割を果たした。

当日の資料


看護師を対象とした医療現場での多言語支援ツール活用セミナーの効果と評価

高嶋愛里、重野亜久里、前田華奈、井田健

 

 多文化共生センターきょうとでは、2006年よりスマートフォン・タブレットを利用して外国人患者とのコミュニケーションを行うアプリを開発している。これまで全国10カ所以上の医療機関で実際に利用されてきたが、利用者から「機械の操作が苦手」「現場でどのように使っていいか分からない」というコメントが寄せられていた。そこで、今回滋賀県内の病院での「ナースのためのぷち通訳(入院看護場面での患者とのコミュニケーションを行うandroidアプリ)」の導入に際して、現場で利用するイメージを持ってもらうため、看護師を対象に活用セミナーを行った。このセミナーの効果と評価、その後の現場での利用状況について報告する。

 

  想定外国人患者を設定し、看護師がバイタルサインズ測定をするという場面を想定し、アプリを活用し、患者とコミュニケーションをとってもらった。セミナー後のアンケートからは、「使ってみたい」「少し使ってみたい」という肯定的な回答が参加者全員から得られ、研修を通じてアプリを活用した外国人患者の対応のイメージを持てるようになったと思われる。中に「特殊検査に関する内容にも対応させてほしい」など、自身の業務で応用したいという希望もあった。
 導入後の病院ヒアリングでは、外国人患者が入院した際は患者の入院する病棟に機材を設置し利用しているというコメントもあった。本セミナーの実施によって実際の現場でも少しづつ活用されつつあると実感している。
 スマートフォン・タブレットでの操作は一見ハードルが高く見えがちではあるが、実際に触って、体験してみることで、アプリに対する評価や意識は大きく変化している。セミナーの実施は、利用の敷居をさげ、手軽なコミュニケーション手段として意識してもらうためには有効な手段であった。今後もこのような研修を実施し、外国人患者のケアにおいて、コミュニケーションツールとしてもっと活用していってもらいたいと考えている。

 

 担当:高嶋