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患者情報を漏洩させた看護師が勤務する病院が敗訴

 がんだった娘の余命を看護師が漏らし、経営する飲食店の客から知らされて精神的苦痛を受けたとして、大分市の女性が同市内の病院院長に330万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡高裁は12日、請求を棄却した1審・大分地裁判決を変更し、院長に110万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 

 犬飼真二裁判長は「院長には看護師が職務上知り得た情報を漏らすことがないよう、監督する義務があった」と述べた。

 

 判決によると、女性の娘はがん治療で同病院に入院、通院。担当の女性看護師は2008年6月頃、余命が半年と分かり、飲食店名とともに夫に漏らした。夫は同店の利用客で、同年7月に来店した際、医師から余命を告げられていない女性に「娘さん、長くないんだって。あと半年なんやろ」などと話した。

 

 娘は同年12月、19歳で亡くなった。

 

 1審は看護師の夫婦間で私的に行われた行為として、院長の責任は認めなかった。これに対し、高裁判決は「勤務場所でなくても、看護師が職務上知り得た秘密を漏らさないよう、監督することができた」として使用者責任を認めた。

 

 女性は院長と看護師夫婦を相手に提訴。夫婦とは和解が成立している。院長の代理人弁護士は「判決文を読んでおらず、コメントできない」と話した。

(2012年7月13日10時17分 読売新聞)

 

原文はこちら


 全ての医療従事者には患者情報を不必要に漏らしてはいけないという「医療従事者としての守秘義務」があり、「秘密漏洩罪」刑法第134条で規定されています。今回はそれに加え、病院の院長が監督責任を問われました。

 

 守秘義務は、医療通訳の講座でも、必ず取り上げるトピックで、重点的に研修も行っていますが、医療通訳の事業を行っている以上、他人事と思える話ではありません。

 

 「この人なら、話しても大丈夫」ではなく、必要な個人情報のみを事業内で共有することを徹底する事が、患者さんにとっても安心して利用できる医療通訳になります。

個人情報の漏洩はもちろん、禁止項目ですが、それ以上に、漏洩されてしまった患者さんの立場を考えると、「精神的苦痛」では片付けられない思いがあると思います。

 

 そのことを忘れずに、これまで以上に気を引き締めていかなくてはいけない、と感じさせるニュースでした。

 

文責:前田

 

※秘密漏洩罪

医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する(134条1項)。